災害支援ガイド

支援調整窓口の運営

(第2回)開設準備とニーズの把握

支援調整窓口の具体的な活動内容は、一般的にはあまり知られていません。共通のマニュアルが存在するわけでもなく、ピースボート災害支援センター(以下、PBV)が運営を担う際も、毎日が試行錯誤の連続です。今回は、窓口開設にいたる判断や事前準備、そして現地のニーズ把握と管理の方法について、実例を交えながら解説します。

*この記事は、2026年7月時点での情報を基に執筆しています。

ー TOPICS ー
 1.課題の共有と開設の判断
 2.ニーズの把握と「顔の見える関係」
 3.窓口の一本化と情報の一元化
 4.関係者の目線合わせとルール作り
 5.走りながら改善する

1.課題の共有と開設の判断

PBVは、2011年の東日本大震災をはじめ、2015年の関東・東北豪雨、2018年の西日本豪雨、2024年の能登半島地震など、数多くの被災地で支援調整窓口の活動に携わってきました。支援調整窓口を開設すべきかどうか、また開設した場合の規模や運営体制をどのようにするかは、被害状況や地域事情によって大きく異なります。

前回の記事でお伝えしたように、支援調整窓口の最大の役割は、全国から寄せられる多種多様な支援の申し出によって混乱しがちな被災地の負担を軽減することです。したがって、大きな混乱が生じておらず、地域内のリソースで十分にカバーできる状況であれば、大々的に窓口を設置する必要はありません。

また、すべての被災地で一様に「炊き出し」の調整が必要とされるわけではありません。状況によっては、マッサージやサロン活動などの心身のケア、あるいは専門的なニーズと支援のマッチング機能に特化した窓口の方が効果的な場合もあります。大切なのは「窓口の設置ありき」で進めるのではなく、「現在の被災地において最優先すべき課題は何か」を、関係者間でしっかりと共有することです。

災害対応を担う基礎自治体である市町村(以下、自治体)や社会福祉協議会(以下、社協)との協議によって開設が決まれば、支援調整窓口は被災者と支援者の双方に広く存在を知られ、「活用されること」で初めてその効果を発揮します。そのためには、アクセス数が多い自治体や災害ボランティアセンター(以下、災害VC)のウェブサイト等で分かりやすく告知を行うとともに、支援に関する問い合わせ先を窓口へ一本化する動線を構築する必要があります。災害対策本部会議や情報共有会議といった支援者が集まる場への参加や、関係各所との個別協議を重ねながら、認知の拡大と合意形成を丁寧に進めていきます。

行政、社協、NPOなどの支援者が集まる被災地での情報共有会議

2.ニーズの把握と「顔の見える関係」

支援調整窓口では、受け入れ側のニーズと状況をリアルタイムで把握し続ける必要があります。どこで、誰が、どのような支援を必要としているのか、また現地にどのような受け入れ体制があるのかを知っておかなければ、支援者との適切なマッチングは成立しません。ここでは、「炊き出しの支援調整」を例に見ていきましょう。

指定避難所の場合、まずは自治体が毎日更新する避難者数データを確認することから始まります。基本方針としては、避難者が30名の避難所には30食規模の炊き出しを、200名の避難所には200食規模の炊き出しを提供する支援者をマッチングしていきます。

ただし、「避難者数=必要な食事数」とは限りません。日中は片付けや仕事で外出する人が多く昼食の必要数が減り、夕方に避難所に戻ってくるため夕食の需要が増えるなど、時間帯によって必要な食数は大きく変動します。また、避難所は近隣の在宅避難者への支援拠点でもあるため、地域によっては必要な食品や炊き出しの数が公的な避難者数を大幅に上回るケースもあります。

そもそも炊き出しの実施場所は、指定避難所だけではありません。孤立した集落や車中泊避難者など公的なデータからは見落とされがちなニーズを把握するためにも、自治会や地域のキーパーソン、現地で長期的に活動するNPOなど、あらゆるネットワークを通じて多角的に情報を収集しています。

さらに、炊き出しの調整は単なる「食数合わせ」に留まりません。提供場所ごとにメニューの履歴を記録し、同じ場所で同じメニューが連続しないように配慮します。カレーや豚汁は炊き出しの定番ですが、味付けや調理方法の変更を提案することで、シチューや煮物、別の汁物へとメニューのバラエティを広げることができます。加えて、調理設備や水道・ガス・電気・トイレといったライフラインの復旧状況、道路状況や駐車場などの受け入れ環境も、できる限り詳細に把握しておく必要があります。

こうしたニーズや状況は、情報を待つだけの受動的な姿勢ではなく、積極的に現地へ足を運ばなければ把握できません。現地調査には、細かなニーズや環境の確認というだけでなく、受け入れ側の担当者や被災者と直接会う目的があります。その場所へ支援を繋ぐのは、一度限りのことではありません。こうした地道な「顔の見える関係」の構築こそが、現場における災害支援の精度を高め、継続的な支援を可能にしてくれるはずです。

各地に足を運んでニーズや状況の確認をするPBVスタッフ

3.窓口の一本化と情報の一元化

これまでPBVが担当してきた支援調整窓口は、被害状況や地域の事情によって運営体制が異なりますが、ここでは2024年の能登半島地震における石川県輪島市での事例を中心に紹介します。

2024年の能登半島地震を受けて「支援調整窓口」を開設した輪島市役所

発災後、輪島市からの依頼を受けて活動を開始することになりましたが、地震に加え同年に発生した豪雨災害も重なり、最終的に窓口の運営規模や期間は大規模なものとなりました。関係各所との協議を経て、2024年1月27日には輪島市のホームページ上での情報発信がスタートしました。市役所の一室を事務所としてお借りできたことは、問い合わせ窓口を文字通り「一本化」させる上で非常に大きな強みとなりました。

*公開した「各種支援調整窓口」のWEBサイト(輪島市HPより)

窓口の運用開始後、支援者からの問い合わせは、①電話、②WEB問い合わせフォームのいずれかで受け付けました。①の電話対応においては、「支援者用」と「被災者(受け入れ先)用」の2つの番号をあらかじめ使い分ける方法が、スムーズな交通整理に役立ちました。このほか、事前連絡なしで直接役所を訪れる支援者への対面対応も発生します。

②の問い合わせフォームには、Googleフォームを活用しました。これはPBVスタッフが使い慣れたツールであったことが理由ですが、もちろん運営者が変われば使用するツールは異なるでしょう。ただし、長期間の運営の中で担当者が交代したり、複数人で共同編集をする可能性を想定すると、あれこれと複雑なシステムを組むのではなく、誰でも直感的に扱える最低限のシンプルな機能に留めておく方が賢明かもしれません。

参考までに、当時の炊き出し受付フォームには、主に以下の入力項目を設定していました。
・支援者の情報(団体名・個人名)
・連絡先(事前連絡用と当日の現地連絡用)
・実施希望日と時間帯(昼食・夕食など)
・メニューと提供可能な食数
・当日の活動人数
・車両の有無(台数やサイズ)
・ボランティア保険への加入状況

項目の追加はいくらでも可能ですが、問い合わせフォームはあくまで「最初の入り口」に過ぎません。PBVではフォームからの問い合わせを受けた後、必ず担当者から電話をかけて詳細な聞き取りと意思確認を行うようにしていました。システム上のボタンの掛け違いを防ぐには、やはり直接的なコミュニケーションが不可欠です。こうして聞き取った情報は、独自の「対応状況シート」に入力し、関係者が常に最新データを一元的に共有・確認できる体制を構築していきました。

4.関係者の目線合わせとルール作り

窓口の一本化と情報の一元化と並んで重要なのが、受け入れに関する基準づくりと、関係機関との「目線合わせ」です。多様な支援を安全かつスムーズに受け入れるためには、地域の個別事情も踏まえた事前の取り決めや、明確な判断基準の設定が欠かせません。

例えば、炊き出し支援で毎回の議論になるのが、「生もの(生野菜や果物、刺身など)」や「氷」の扱いについてです。「新鮮な果物を食べて栄養をつけてほしい」「暑い夏にかき氷で涼をとってもらいたい」という支援の申し出は、被災者にとっても大きな励みとなるでしょう。

しかしその一方で、衛生管理や食中毒防止を最優先とする保健所の立場としては、これらの取り扱いは極めて慎重にならざるを得ません。リスクを恐れて一律に断ることは簡単ですが、PBVでは関係者と共に「どうすれば安全に受け入れることができるか」という可能性を探る姿勢を大切にしています。 

被災地でのかき氷の炊き出し(写真は珠洲市での様子)

輪島市の事例では、保健所や市の担当課、栄養士、炊き出し経験を持つPBVスタッフが協議をして、衛生管理上のルールなどを明記した「【輪島市】炊き出しチェックシート」を作成しました。支援者が最低限遵守すべき項目をシートとして可視化したことで、炊き出しの質の担保と安全性の確保が可能になりました。

さらに、頻出する質問をまとめた「よくある質問 Q&A」をあわせて作成したことで、窓口での1件あたりの電話対応時間を大幅に削減することにもつながりました。こういった現場で機能する実践的なルールや資料の策定には、PBVが長年培ってきた炊き出し・食事支援の経験が大いに役立ちました。

5.走りながら改善する

この他にも、開設に向けた細々とした作業はたくさんあります。備品調達、人員配置、マニュアル作成など、万全の準備ができれば運営がスムーズになるのは間違いありません。しかしながら、支援調整窓口は被災地が混乱している場面にこそ必要な活動です。そのような現場では、最初から完璧な準備を望むのではなく、「最低限の準備が整ったら、まずはスタートさせる。あとは運用しながら改善させていく」という柔軟な姿勢を持ち合わせておくことが必要です。

炊き出しのケースで言えば、迅速な対応を優先してまずは対応しやすい場所への支援をマッチングすれば、他の地域から「なぜこちらの地区には支援が届かないのか」とお叱りの声をいただくこともあるでしょう。しかし、それを真摯に受け止めて反省しつつも、そうした声は「これまで見えていなかった、新しいニーズを発見することにつながった」と捉えることもできるはずです。支援調整窓口の運営には、「小さくてもできることから速やかに着手し、動かしながら課題を見つけ、徐々に対応範囲と精度を高めていく」というスタンスが適しているのかもしれません。

事実、石川県輪島市の各種支援調整窓口では、炊き出し以外にも食料や物資の供給、慰問・イベント、マッサージなどの心身ケアやサロン活動などの調整を行ってきましたが、炊き出し以外の分野ではチェックシートや資料の整備が間に合っておらず、今後の運営改善に向けた宿題が残っています。

能登半島地震では、PBV以外の災害支援団体や災害中間支援組織が、各市町村で支援調整の窓口を担いました。今後は、それぞれの現場で得た経験や反省を互いに検証し、さらなる支援の質の向上と体制の改善に取り組んでいきたいと思っています。

*2026年熊本地震における「支援調整窓口」の活動については、現地事情が落ち着いた後に本記事への加筆を予定しています。

 

関連記事を読む
 ・(第1回)支援の申し出に戸惑う被災地
 ・(第3回)コーディネーションの実務

参考資料
・内閣府(防災担当)「地域の『受援力』を高めるために」
・内閣府(防災担当)「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック ~三者連携を目指して~」.平成30年(2018年)4月
・全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)「被災者支援コーディネーションガイドライン」.2022年3月
・全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)「災害支援ネットワークの手引き」.2025年9月

 

Photo by: PBV、Social Good Photography, Inc、Suzuki Shoichi