災害支援ガイド

支援調整窓口の運営

(第3回)コーディネーションの実務

支援調整窓口の活動に携わっていると、寄せられる支援の形がいかに多種多様であるかを日々痛感します。今回は前回に引き続き、ピースボート災害支援センター(PBV)が石川県輪島市で担当した支援調整窓口の事例をもとに、具体的な支援者との調整プロセスや、現場で得られた経験についてご紹介します。

*この記事は、2026年7月時点での情報を基に執筆しています。

ー TOPICS ー
 1.支援調整窓口の1日
 2.ギャップを埋めるための調整
 3.問い合わせと対応 ケース①~⑤
 4.フェーズの変化
 5.「どうすれば実現できるか」を考える

 

1.支援調整窓口の1日

輪島市での各種支援調整窓口の1日は、事務所(市役所の一室)に出勤するところから始まります。

【午前】情報のアップデートと優先順位の整理

到着したPBVの担当スタッフは、まずパソコンを開いて「対応状況シート」の最新データを確認します。

このシートには、問い合わせ順に支援者の情報や提案内容、実施予定日、進捗状況などがリアルタイムで記録・更新されています。あわせて、Webサイト上の問い合わせフォーム(Googleフォーム)に届いた新規の申し出を確認・追記し、その日に対応すべきタスクの優先順位を検討します。

整理が終わる頃には、支援者からの問い合わせ電話が鳴り始めます。ピーク時には1日に20~30本以上の電話に対応することもありました。初めて問い合わせをしてきた支援者の場合、現地の状況説明や事前確認事項を含めて1件あたり10分以上を要するため、日中の業務時間の大半を電話対応に費やすことも珍しくありません。

【午後】候補の絞り込みと受け入れ先への連絡

午後になると、各避難所の避難者数などが更新されます。避難所以外の受け入れ先の最新情報も確認した上で、支援者の希望内容と被災地のニーズが最も合致する候補を絞り込んでいきます。日中は電話対応が断続的に続くため、落ち着いてマッチング作業を進められるのは、夕方以降になる場合も多くありました。

マッチングの候補が固まると、受け入れ側の施設や避難所運営者への確認連絡を行います。現地スタッフの負担を考慮し、緊急時を除いて電話連絡は17時頃までに完了させるよう心がけていました。受け入れの承諾を得てから支援者へ確定の連絡を入れ、これでひとまず1件のマッチングが完了となります。

【その他】マッチング完了後から当日まで

マッチングが完了しても、実施当日まで調整は続きます。受け入れ先の避難者数の増減はもちろん、土砂崩れや復旧工事による急な通行止めが高頻度で発生するのも被災地ならではの事情です。

一方の支援者側は、マッチング確定後に資機材の手配や搬入ルートの確認といった本格的な準備に入ります。そのため、実施直前まで具体的な準備に関する質問や相談が寄せられます。情報の漏れや伝達ミスが支援の質を左右しかねないので、最後まで気を抜かずに対応を続けます。

多ければ1日に10か所以上の現場で同時に支援活動が実施されることもあり、限られた人員で運営している調整窓口の担当スタッフがすべての現場に同行することは困難です。そのため基本的には、最終的な運営は支援者と受け入れ先の現場判断に委ねていましたが、特別な配慮が必要な場合や不安要素がある場合は担当スタッフが立ち会うようにしていました。

こうした日中の調整業務に加え、夕方以降には事務作業や翌日の準備が控えています。長期にわたる災害支援活動を持続可能なものにするためには、担当スタッフの健康管理と休息が欠かせません。複数名の担当者でシフトを組み、交代でリフレッシュできる時間の確保にも努めました。

支援調整窓口の活動は、電話とパソコンに向かう毎日

 

2.ギャップを埋めるための調整

支援調整窓口の役割は、単に条件の合う者同士を引き合わせるだけではありません。双方の認識や条件にギャップがある場合には、窓口側からの柔軟な提案や相談を持ちかけることで、その溝を埋める「コーディネーション(調整)」が重要になります。具体的なケースを基に、炊き出しにおけるコーディネーションの選択肢を考えてみましょう。

被災地での炊き出しの様子

 

ケースの設定

  • 被災地の状況:
    X市には10か所の避難所があり、各所に20名~200名、合計1,000人が生活している。
  • 支援者側の申し出:
    支援調整窓口に「1週間後に、1,000食の炊き出しを実施したい」という申し出があった。
    ※1週間後も避難者数は同数で、他団体の炊き出しの予定はないと仮定する。

この条件に対し、まずは極端な2つの方法を考えてみます。

  • (案A)支援者を10グループに分け、10か所の避難所すべてで各20食~200食を提供する
  • (案B)避難者全員を1か所の拠点に集めて、1,000食を一括提供する

(案A)のように1か所の食数が少なくとも、10か所で同時に炊き出しを展開するには膨大な資機材や人手(スタッフ)が必要となり、支援者側の負担が大きすぎます。一方で(案B)のように、避難者全員を移動させるためのバス等の手配も現実的にはハードルが高いと言わざるを得ません。どちらも実現の可能性は低い選択肢でしょう。


それでは、次のような代替案はどうでしょうか。

  • (案C)200人規模の避難所を選定し、昼・夜の2回(計400食)に食数を絞って提供する
  • (案D)200人規模の避難所で実施し、近隣の「在宅避難者」にも対象を広げて提供する

支援者の中には「どうしても一度に1,000食を提供したい」とこだわるケースもありますが、(案C)のように食数を分散・縮小するアプローチは現場で頻繁に行った調整方法のひとつです。(案D)は理想的な実施方法かもしれませんが、在宅避難者への周知や正確な人数の把握が難しいため、当日の提供数にある程度の振れ幅が出ることを想定しておく必要があります。

さらに、被災地側の事情を汲んで柔軟に対応をしてくれる支援者であれば、次のような選択肢も視野に入ります。

  • (案E)一度に1,000食を提供するのではなく、数回に時期を分散して提供する(例:200食×5回など)
  • (案F)避難所ではなく、同じく被災している自治体職員向けなどに提供してもらう

避難生活が長期間に及ぶことを考えれば、被災地側が最も助かるのは(案E)のように継続的に支援を分散してもらう選択肢かもしれません。また、(案F)の自治体や社協、施設などの職員は、支援の対象として盲点になりがちな存在です。災害対応の最前線に従事する職員の多くは、住民向けの炊き出しの列に自ら並ぶことを自粛してしまいます。「職員の皆さまもどうぞ」と声をかけるだけでは状況は変わらないため、庁舎内の一角など、人目を気にせず受け取りができる提供場所を用意してあげられると良いでしょう。

支援調整窓口からの提案で実施した自治体職員向けの炊き出し

このように、支援調整窓口の役割は単なる「パズルのピース合わせ」ではありません。規模や方法、対象を柔軟に組み替えるアイディアを提案し、被災地のリアルなニーズと、支援者の希望のギャップを埋めていく努力が求められます。

 

3.問い合わせと対応 ケース①~⑤

窓口の運用が本格化すると、連日多様な問い合わせが寄せられます。ここでは、実際に受けた代表的な事例やイレギュラーなケースを5つ挙げ、その対応の舞台裏をご紹介します。

ケース①:「当日の天気や気温はどうですか?」

支援の準備段階に入ると、窓口には現地の気候に関する質問が増えます。慣れない被災地での活動に、不安や疑問を抱える気持ちは分かります。ただ、支援調整窓口の担当者もインターネット等で確認した天気予報を伝えることしかできないため、実質的には支援者自身で行う情報収集と大差はありません。まずは、各自で事前の情報収集を行ってもらうように促すことも、窓口の小さな役目です。

ケース②:「ゴミはそっちで処分して!」

対応に苦慮するのは、「活動で出たゴミの処分をお願いしたい」「現地で〇〇の資機材を用意してほしい」「〇人の集客を保証してほしい」といった、現地への依存度が高い問い合わせです。災害支援における原則は「自己完結」であり、被災地側に負担をかけないことが大前提です。 事前に周知しているチェックシートやQ&Aに目を通していないケースもあるため、現地の厳しい事情を丁寧に対話し、しっかりと納得いただいた上で支援に臨んでもらうよう心がけています。 

ケース③:「今回はキャンセルします」

他所で受け入れ先が見つかったことで、問い合わせ後にキャンセルが出るのは仕方のないことです。実施日まで十分な猶予があれば窓口側で再調整をかけられますが、直前のキャンセルは現場を混乱させてしまいます。キャンセルに至らずとも、当日の到着が数時間遅れるといったケースもありました。支援者に対しては、交通渋滞やルール変更など発生しやすいトラブルをあらかじめ伝達しておくことも大切です。同時に、到着をずっと待っていた受け入れ先への丁寧なフォローも忘れずに行う必要があります。

ケース④:「ボランティアをしたいです!」

個人のボランティア応募に関しては、基本的には災害ボランティアセンター(災害VC)を案内しています。しかし一方で、支援調整窓口が独自に把握しているニーズの中には、一般的な災害VCの枠組みでは対応しきれない「隙間のニーズ」が存在します。被災地側のキーパーソンと直接橋渡しをしたり、現地で専門的に活動中のNPOへ繋いだりすることもあります。窓口が多くの現地関係者を知っていることで、対応の幅を広げることができます。

ケース⑤:「お酒を振舞いたい!」

能登半島地震では地元の酒蔵も多く倒壊しました。この時、輪島塗の縁で歴史的関わりのある京都の酒屋から「クラフトビールで被災者の疲れを癒してほしい」と申し出がありました。自粛されがちな嗜好品ですが、窓口ではその想いを優先しました。施設によっては受け入れを断るところもあり、また公共の場所では振る舞わないといった細かな配慮と管理体制を整えて実施を決めました。当日は混乱もなく多くの被災者が喜んでくれました。

暮らしへの支援は避難所や仮設住宅に集中しがちですが、被災した飲食店や旅館、そして観光業や漁業といった地域の歴史・文化を支えることこそが、次の未来をつくり復興への後押しにもなります。多様な善意を適切な形へコーディネートする窓口の意義を、改めて再認識できた事例です。

 

4.フェーズの変化

輪島市での各種支援調整窓口は、2024年1月15日に開設しました。最初の約3か月は問い合わせの9割以上が炊き出しに関するものでした。その後、時間の経過とともに、同じ炊き出しであっても主食以外のコーヒーやスイーツといった嗜好品の提供など、被災された方々の心身がほっとするような内容へと変化していきました。さらには、被災者と一緒に調理を楽しむ「参加型」のスタイルへと形を変えていきました。

また、支援の主な受け入れ先も、学校や公民館などの指定避難所から、応急仮設住宅の集会所や福祉施設等へと移行していきました。支援内容も、初期の緊急物資提供といった「提供型」の支援から、理美容・マッサージなどの身体ケア、演奏やレクリエーションといった慰問活動へと多様化。さらには健康体操やサロン活動、体験教室といった「住民参加型・コミュニティ形成型」の支援へとシフトしていきました。

問い合わせの内容は、サロンや体験教室などの支援に変化してきた(2026年、輪島市)

発災から2年半以上が経過した2026年7月現在も輪島市の支援調整窓口の活動は続いています。PBVにとっても、これほど長期間にわたり窓口機能を担い続けるのははじめての経験です。マッチングの実務自体には慣れてきましたが、受け入れ側の情報やニーズは今も変わり続けています。その中でミスマッチを防ぐために、開設当初から私たちが一貫して守り続けているのは、「常に現場へ足を運び、コミュニケーションを重ねる」ということです。 

時間や環境の変化に伴い、常に受け入れ側の最新のニーズや状況を把握しておくことが何より重要になります。復旧や復興のスピードは、地区や場所ごとに異なります。ある場所で成功した対応が、別の場所でも同じように通用するとは限りません。だからこそ私たちは、これからも現場に足を運び、住民の皆さんと対話を重ねながら、ニーズと支援のギャップを生まないよう丁寧な調整を心がけていきたいと思います。

 

5.「どうすれば実現できるか」を考える

支援調整窓口の運営をしていると、受け入れが難しい提案や、調整に多大な労力を要する問い合わせにも直面します。もちろん、全ての要望に応えられるわけではないため、苦渋の決断でお断りせざるを得ないこともあります。しかし、条件が合わないからと支援を断ってばかりでは、被災者と支援者を繋ぐために設置された窓口としての意味がありません。

災害現場は「人手がない」「モノがない」「時間がない」「前例がない」という、まさに「ない」の連続です。その「ない」という厳しい前提を受け入れた上で、「では、どうすれば実現できるか」を常に前向きに考えること。災害支援活動において最も欠かせない考え方のひとつではないでしょうか。

支援調整窓口の活動は、電話対応やデータ入力といった地道な事務作業が大部分を占めます。汗をかく直接的な活動に比べると派手さはなく、目立つこともありません。しかし、全国から寄せられる「被災地・被災者を支援したい!」という想いを、具体的な形にするための重要な活動です。こうした支援調整窓口を含めたコーディネーションの舞台裏はあまり知られていませんが、今後もしっかりと知見を蓄積・共有しながら、仲間や担い手を増やしていきたいと思います。


能登での活動は2026年9月現在も進行形であり、最終的な評価や総括を下せる段階ではありません。十分な振り返りができていない段階で活動を記事にまとめることへの葛藤はありましたが、次の災害への備えに「待った」はありません。成功事例やノウハウとしてではなく、PBVが積み重ねてきたリアルな試行錯誤の記録として、皆さまの今後の活動の参考にしていただければ幸いです。

*2026年熊本地震における「支援調整窓口」の活動については、現地事情が落ち着いた後に本記事への加筆を予定しています。

関連記事を読む
 ・(第1回)支援の申し出に戸惑う被災地
 ・(第2回)開設準備とニーズの把握

参考資料
・内閣府(防災担当)「地域の『受援力』を高めるために」
・内閣府(防災担当)「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック ~三者連携を目指して~」.平成30年(2018年)4月
・全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)「被災者支援コーディネーションガイドライン」.2022年3月
・全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)「災害支援ネットワークの手引き」.2025年9月

Photo by: PBV、Social Good Photography, Inc、Suzuki Shoichi