避難所の運営支援

(第4回)「運営」の課題と対応

避難所に「お客様」は存在しません。行政、施設の管理者、支援者、そして避難者となった住民自身が協力して運営します。大規模災害であれば、外部の専門家に頼る場面もあるでしょう。日頃から研修や訓練をしていたとしても、実際は予想外の出来事の連続です。関係者で話し合い、状況に合った現実的な方向性を相談しながら運営を進めていきましょう。

 

*この記事は、2026年2月時点での情報を基に執筆しています。


1.避難所の運営は、誰が担当する?

避難所は、その規模や運営方法がそれぞれ異なります。数百人が集まる学校の体育館などの指定避難所では、①避難中の被災者、②行政職員、③施設管理者、④支援者・ボランティアが役割分担をしながら運営に関わります。①〜④それぞれの役割を見ていきましょう。

   避難所の運営会議(2018年、岡山県倉敷市)

 

① 避難中の被災者

避難所の自主運営を目指すうえで、被災者は運営の主体です。地区住民で担当を決めている場合もありますが、想定とは異なるケースも多く、その場に集まった被災者の中から必要なメンバーを選ぶことが一般的です。

② 行政職員

数日から週交代で市区町村の職員が配置されます。物資や食事、備品の調達など、避難者数や在庫に合わせた調整窓口を担います。大規模災害時には、他の自治体からの応援職員が配置されることもあります。

③ 施設管理者

学校避難所であれば教職員、その他の施設は指定管理者などがこれに当たります。施設の安全管理や敷地・部屋・設備の使い方の指導を行います。授業の再開など、避難所としての機能と施設本来の目的との調整も重要な役割です。

④ 支援者・ボランティア

近隣住民が通いで掃除や炊き出しを実施することもあれば、マッサージなど職業や特技を活かしたボランティア、専門的なスキルを持ったNPOによる様々なサポートが行われることもあります。医療や福祉関係者は、健康維持のための巡回も行います。

 

①~④は必ずしもどの避難所にもいるとは限りませんが、それぞれ別の視点で避難所の環境や被災者の様子を見ています。それぞれの気づきや課題を持ち寄り、話し合い、方向性を確認しながら運営できることが望ましいでしょう。避難所の運営会議はすべての避難所で開催されるわけではありませんが、なるべく毎日、決まった時間に実施することで、運営者間でのスムーズな情報共有を図ることにつながります。

 

2.避難所コミュニティの捉え方

避難生活が中長期化すると、避難所は「一時的に身を守る場所」から「生活の場」へと変化します。入退所者の出入りが落ち着き、少しずつ環境に慣れていくうちに「避難所コミュニティ」が形成され始めます。掃除当番や食事当番などの役割を持つことで、コミュニティへの帰属意識が生まれる被災者も少なくありません。

ただ、このコミュニティは時限的なものです。避難所は、次の住まいを確保できた人から順に退所し、役割を担っていた人が徐々にいなくなり、いつかは閉所を迎えます。施設は被災者の所有物ではなく、あくまで借用している場所であり、使用には制限があります。持続可能性や発展性を求める一般的なコミュニティ構築のモデルとは、一線を画す必要があるかもしれません。避難所コミュニティならではの特徴を理解し、状況に合わせて柔軟に運営スタイルを変更する必要があることも覚えておきましょう。

  今後の避難所について話し合う意見交換会

 

3.「自主運営」は選択肢のひとつ

ピースボート災害支援センター(以下、PBV)では、行政職員を対象にした避難所の運営研修を行っています。その中でよく受ける質問のひとつが「どうやったら、避難所の自主運営が上手くいきますか?」というものです。どこまでを「自主運営」と捉えるのかは人や立場によって異なるでしょうが、私たちはあまりその言葉に囚われ過ぎない方がいいとお答えしています。

物資や食事調達などの行政の公的業務はさておき、住民のリーダーや班長を中心に避難所の環境改善や健康維持に取り組むことは確かに望ましいことです。ただ、運営を担う被災者が「り災証明の手続きに行く時間が取れない」「日中、避難所を離れて仕事に行くのが申し訳ない」「自宅の片づけに行く余裕がない」といったように、自身の生活再建を後回しにしてしまう状況は本末転倒です。

また、数人の高齢者だけが集まる避難所で「自主運営」という高い目標を掲げることは現実的ではありません。避難所で担当できる役割は多種多様です。掃除をする、彩りのために花を飾る、子どもの遊び相手になる、掲示物にイラストを描くなど、高齢者や子どもたちにもできることがあります。無理のない範囲で、それぞれが主体的に参加できることがないかを探してみましょう。

  お花の世話をする避難所の住民と運営スタッフ(2022年、熊本県多良木町)

 

4.避難所運営を支える外部支援者

避難所の運営者が直面する課題には、専門家や外部からの応援が必要なことが多くあります。大規模災害時には、被災市区町村の職員だけで災害対応と通常業務を両立させるのは困難です。そのため、避難所運営においても「対口(たいこう)支援」などの他自治体からの応援の仕組みが運用されています。DMAT(災害派遣医療チーム)が有名かもしれませんが、この他にも医療・福祉などの専門家チームが派遣され、巡回などによる避難所の運営をサポートしています。

  避難所に派遣された自治体の応援職員とPBVスタッフ(2024年、石川県輪島市)

 

また、災害ボランティアセンター(災害VC)は、災害時の特別体制として主に被災地の社会福祉協議会が運営します。ボランティアによる自宅の片づけや仮設住宅への引越し支援は、被災者が避難所を退所し、次の生活に移るためにも大きな助けになります。避難所内でも、一斉に段ボールベッドを設置する場合のボラティアを頼むこともできるでしょう。

その他、被災地にはNPOや業界団体などの民間の支援が集まります。単発、通い型、常駐型など活動スタイルは異なりますが、炊き出しや子どものケア、学習支援、法律相談、洗濯代行、ペットの一時預かりなど、それぞれの得意分野があり、避難所の運営にも役立つ支援が数多く含まれています。これらの多様な支援を、上手に「受援」するための窓口となる「災害中間支援組織」も各地で設立されています。ただし、現場の課題が認識されなければ、外部支援は届きません。避難所の運営側としては、困りごとに目をつぶるのではなく、声を上げることを心がけましょう。

 

5.統廃合の課題

避難所はいつか閉所しますが、その過程で統廃合を繰り返します。統廃合によってある避難所は閉所して役目を終えますが、別の避難所では新しい人を受け入れることになります。移動する被災者にとっては、生活環境も異なり、知らない人とまた関係をつくるところからの再出発です。新しい環境に馴染めるよう、運営側には細やかな配慮が求められます。

統廃合の順番はケースバイケースですが、学校避難所は子どもたちの利用を優先させたい傾向にあります。被災者にとっては「住み慣れた場所から追いやられる」と感じやすい状況です。避難所の統廃合は、噂による誤解や感情的な対立が起きやすいデリケートな課題です。事務的な報告で済ませてしまわず、一人ひとりの気持ちにも配慮したコミュニケーションを大切にしましょう。

 


 

ここまで、全4回にわたって中長期の避難所運営について考えてきました。避難所の「開設」はもちろん重要ですが、すでに多くの自治体や施設で訓練が実施されており、様々な関連情報も発信されているので、今回はあまり文字数を割きませんでした。ただ、大規模災害を見据えるのであれば、開設後の「運営」についてもきちんと想定と準備を進めてみてください。

 

内閣府(防災担当)では、災害関連死を防ぐために「避難生活支援・防災人材育成エコシステムの構築」を掲げ、地域でのボランティア人材の育成に取り組んでいます。その中で生まれた「避難生活支援リーダー/サポーター研修」は、PBVもカリキュラムづくりや講師として参画していますが、中長期の避難所運営を想定した内容です。研修の様子をまとめた動画をご紹介しますので、皆さんの地域で開催される際はぜひ参加をご検討ください。また自治体職員の皆さんは、ぜひご自身の地域でも開催をご検討ください。

 

 

参考資料

内閣府(防災担当)「避難所運営ガイドライン」,2016年
・内閣府(防災担当)「避難生活リーダー/サポーター 研修テキスト」(令和7年度更新版),2025年
Sphere Association「スフィアハンドブック」(支援の質とアカウンタビリティ向上ネットワーク訳),2018年

震災がつなぐ全国ネットワーク「「ハイリスク予備軍」の人を見つけよう 解説冊子」,2016年

特定非営利活動法人レスキューストックヤード「できることからはじめよう!避難所運営の知恵袋(改訂版)~みんなで助け合える避難所づくりのために~」,2019年

・公益社団法人ピースボート災害支援センター「避難所運営における困難や課題等に関するアンケート」,2023年

photo by: Suzuki Shoichi, Social Good Photography,Inc.