食事支援・炊き出し

(第3回) 「炊き出しをしたい!」よくある質問・10選

ピースボート災害支援センター(以下、PBV)には、被災地での食事支援・炊き出しに関して多くの質問や相談が寄せられます。今回は、その中から外部支援者が被災地で炊き出しをする際に「よくある質問」について、順を追って解説します。

*この記事は、2026年2月時点での情報を基に執筆しています。


 

①初めての被災地での炊き出し、どこに相談すればいいですか?

被災地の知り合いなどから直接頼まれた場合には行き先が決まっているでしょうが、そうではないケースはたくさんあります。支援者向けの支援の問い合わせ窓口が決まっておらず、被災地の行政や災害ボランティアセンター、避難所施設が電話対応に追われる姿を何度も目の当たりにしてきました。そこで注目され始めているのが、炊き出し支援者に向けた「支援調整窓口」の存在です。まずは、行きたい被災地の市区町村に支援調整窓口が開設されているかどうか調べてみてください。

支援調整窓口には、支援のモレやムラを防ぐ目的もあります。例えば、「ある避難所には1日に複数の炊き出しがあるのに、隣の地区ではパンとおにぎりだけ」といった事態が発生していたり、連日カレーや豚汁のメニューばかりが続いているかもしれません。支援調整窓口では、支援者から寄せられた情報を基に、実施日時やメニュー、食数などの被災地側のニーズとのマッチングをしています。

輪島市(2024年能登半島地震)での「支援調整窓口」の様子。
※支援調整の具体的な活動内容は、後日改めて紹介を予定しています。

 

②どんなメニューが喜ばれますか?

具体的なリクエストを受けて炊き出しに行く場合は別ですが、自主的な支援の場合にはメニューや食数は実施する側が決めることになります。慣れないメニューやキャパシティを超えた食数で失敗するよりは、まずは「できる範囲」で確実な提供を優先しましょう。

おにぎりやパンといった炭水化物が続いていたり、冷えたお弁当が連日続いているかもしれません。タンパク質や食物繊維などの栄養が摂取でき、温かい状態で口にできるメニューは非常に喜ばれます。行政から提供されるお弁当にプラスして、炊き出しでお味噌汁やスープを一品加える方法もあります。また主食以外にも、コーヒーやデザートなどの「ホッとできるもの」も人気です。

 

③食材の現地調達や水道の使用は可能ですか?

大規模災害では、ライフラインの復旧に時間がかかります。発災から日が浅いうちは、ガスボンベや調理用の水などはすべて持ち込み、ゴミはすべて持ち帰る「自己完結」が原則です。復旧が進むと状況は変わりますが、支援者が使える状態にあるかどうかは都度現地に確認してください。

食材の現地調達も同様です。経済的な貢献は大切ですが、支援者による買い占めが被災者側の物不足に拍車をかけてしまっては本末転倒です。「持ち込み型」から「現地購入型」に切り替えるタイミングは、被災地の復旧・復興状況に合わせた判断が必要です。

 

④アレルギー対応や個別食の準備も必要ですか?

高齢者や乳幼児、アレルギー、宗教上の制限など、配慮が必要な被災者がいます。炊き出しの受け入れ先や支援調整窓口から、事前に対象者の詳細が知らされていれば個別の準備も検討できるでしょう。さらに実施当日もホワイトボードなどでアレルギー情報の掲示をしておくことで、本人も安心して申し出ることができるでしょう。PBVでは、事前に把握できない対象者向けに、基本の調理メニューに加えて、なるべく予備のレトルト食品などを持ち込むようにしています。

ただ、炊き出しの実施者がすべてを完璧にカバーすることは困難です。②のメニューや食数と同様に、自分たちの「できる範囲」を優先してください。被災地には、栄養や個別食などを専門にする日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)が支援に入ることもあります。頼れる先があれば、きちんと頼る姿勢も大切です。

 

⑤避難所と比べ、在宅避難者向けの炊き出しで気をつけることがありますか?

在宅避難者や車中泊、ビニールハウスなどに自主避難している人たちは、公的な支援から取り残されやすい存在です。公民館や駐車場の一角など、近隣の在宅避難者がアクセスしやすい場所で炊き出しがあれば、とても助かるでしょう。また避難所は、入所者だけでなく在宅避難者の支援拠点としての機能が期待されています。例えば学校避難所であれば、体育館近くでは入所者向けに、駐車場では在宅避難者向けにといった2つの炊き出しを共存させることも可能です。

個別訪問などで食の課題を抱える在宅避難者の名簿がわかれば、行政や地区の関係者とも連携し、対象者に「食事の引換券」を発行した事例もあります。支援者側にとっては、準備する食数やアレルギー対応等の情報が事前に把握ができるので助かります。また、在宅避難者の中には「私は避難所の住民でないから申し訳ない」と遠慮がちな人がいます。引換券は、在宅避難者が気兼ねなく食事を受け取ることができる安心材料にもなるでしょう。

 

⑥被災地の交通事情はどのような状況ですか?

人と物を運ぶ必要がある炊き出しでは、車移動が中心になります。大きめの車種を運転することもあるはずです。大規模災害では、家屋が倒壊し道路をふさいでいたり、道路の亀裂や陥没は決して珍しいことではありません。マンホールが隆起していることもあります。渋滞や急な通行止めも日常茶飯事です。季節や地域によっては、道路の凍結や雪の影響もあります。道路啓開が進むにつれて走行は可能になりますが、もし運転に不安があれば、実施時期を遅らせる選択肢も検討してください。

炊き出し当日は、カーナビの時間通りには到着しないことを前提に、時間に十分な余裕を持った移動を心がけましょう。何時間も被災者を待たせてしまったり、炊き出しを実施できなかったケースも耳にしています。また移動の際は、連絡体制や危機管理上も、2人以上での行動をお勧めします。

隆起したマンホール。夜間は特に注意が必要

 

⑦提供した料理を食べる場所はどこですか?

実施日の直前や当日の物品の準備段階になって初めて気づく人が多いのかもしれませんが、炊き出しの受け入れ側や支援調整窓口に事前に確認しておきましょう。持ち帰りを希望する人もいますが、その場で住民同士が会話しながら食事を楽しめる環境づくりも大切な視点です。

PBVでは屋外の食事スペース用にテントやテーブル、椅子、ゴミ箱などの設営を準備していますが、そこまで手が回らない場合もあります。現地に機材や人員のサポートができるか相談をしてみましょう。被災者の中にも「自分たちでできることは自分たちでやりたい」と思っている人が多くいます。③で「自己完結」が原則とは書きましたが、一方で現地の負担が過度になり過ぎない程度に、上手に協力し合える形も探ってみましょう。

 

⑧ライフラインが復旧したと聞きました。もう炊き出しは不要ですか?

必ずしも「ライフラインの復旧=自炊できる」ではありません。地域的には復旧していても自宅の配管修理や、キッチンや調理道具の修繕が進んでいないことがあります。災害救助法で卓上コンロなどの調理道具を提供することは可能ですが、今のところ高額な家電までは想定されていません。ただ、被災者が生活家電を再購入するには経済的な負担も大きいことから、被災自治体が独自予算で上乗せをしたり、経済団体やNPO/NGOなどが可能な範囲で民間支援を行っています。

確かにライフラインの復旧は、炊き出しの引き際を考え始めるきっかけではあります。ただ、支援の区切りはそれほど単純には線引きができず、移行期には徐々に食数や回数、場所、対象者の調整をしていく必要があるでしょう。

 

⑨炊き出しが現地の飲食店などの営業を妨害していませんか?

飲食店の再開は、炊き出し支援の終了を考えるひとつの目安です。一方で、地域全体ではバラつきがあり、隣の地区ではまだ支援が必要かもしれません。炊き出し以外の支援方法に切り替えるのも選択肢です。PBVが現地常駐型の支援をしているのは、こういったニーズの変化をいち早く察知し、柔軟に対応するためでもあります。

災害救助法を活用して、すぐには店舗の再開が難しい料理人やスタッフを雇用し、避難所などで配布するお弁当づくりを担当してもらった事例もあります。時限的な対応ではありますが、地元の雇用を守ることにもなり、自身の調理スキルが地元の復興に活かされたと実感できることで、その後の生業再生への後押しにもなるでしょう。

 

⑩ボランティア向けの炊き出しをしたいのですが?

どちらかと言えば、外部支援者よりも被災地内の有志から「支援者への恩返し」として相談を受けることが多いように感じます。私たちも、何度か支援者向けの炊き出しをいただいた経験があります。被災者への食の支援が行き届いていることが前提ではありますが、差し入れなどを含め基本的にはありがたく頂戴しています。

支援者にとっても被災者にとっても、「支援する・される」の関係ではなく、「お互い様」の関係が築かれることは、長い復興の道のりにおいて大きな力になります。支援者向けの炊き出しは、そんな温かい関係性を生むきっかけなのかもしれません。

 


全3回シリーズで被災地の「食」の課題と支援について考えてきました。地域内では対応しきれず、外部支援者が必要な被害の想定で話を進めたので、「こんなに大変なのか…」と思われた方もいるかもしれません。被害が小さければ対応はもっとスムーズでしょうが、大規模災害の現場はそれだけ複雑で切実な状況だということです。だからこそ、もっと支援の手が必要なのです。

 
被災地のリアルな「食」の課題については、以下の冊子も参考にしてみてください。

*被災地では、私たちもたくさんの課題に直面してきました。PBVが事務局を務める「みんなの炊き出し研究所」では、それらの具体的な事例集を作成し公開しています。記事内では紹介し切れなかった課題や工夫も取り上げています。

みんなの炊き出し研究所「災害時の炊き出しに関わる課題・解決事例集~災害時の「食」にまつわる課題36事例~」,2022年6月

*「JVOAD(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)」では、災害時の食と栄養を優先課題のひとつと捉え、支援団体や栄養士らによる専門委員会「食べる支援プロジェクト(たべぷろ)」の取り組みを推進しています。その活動の一環で作成した手引書も、ぜひ参考にしてください。

食べる支援プロジェクト(たべぷろ).災害時の食と栄養 支援の手引き【第二版②】.2024年5月

 

 

 

参考資料
Photo by:Suzuki Shoichi