食事支援・炊き出し
(第2回) 様々な食の支援
全3回シリーズでご紹介する被災地での「食」の課題と支援。第2回目の今回は、具体的な支援の選択肢をご紹介します。食品の提供、屋外での炊き出し、キッチンカーの活用など、被害や復旧状況に合わせて、自分たちにできる最適な支援の形を見つけてみてください。
*この記事は、2026年2月時点での情報を基に執筆しています。

災害の規模やフェーズによって、求められる食の支援は異なります。支援者側の現実的な事情もあるでしょう。次の7つの選択肢は、発災からの時系列に沿った順番を意識していますが、実際には状況に合わせて柔軟な対応を検討しましょう。
1.支援物資・食品の寄付

支援物資・食品の寄付は、直接被災地に行くことができない人にも可能な支援です。行政が個人からの支援物資を募集しない場合もありますが、まずは被災地の市区町村のホームページをチェックしてみましょう。また、被災地で炊き出しをする支援団体が食材などを募集することもあります。災害に乗じた誤情報には注意しつつ、公式アカウントからのSNS投稿も確認してみましょう。
炊き出しなどの調理環境を整えるには時間がかかります。特に発災直後はスピードが優先されるため、飲料水やカップ麺、レトルト類、アルファ化米などの食品を直接配布する支援が中心になります。その後、避難所などでは災害救助法を適用してパンやおにぎり、お弁当が主食として提供されるようになりますが、どうしても栄養バランスが偏ります。野菜ジュースやスープ類を追加したり、冷蔵保管が可能になれば、豆腐や乳製品などの補助食品で栄養素を補う工夫も大切です。
2.湯煎・温め調理

意外に感じるかもしれませんが、手元にカップ麺、レトルト類、アルファ化米などの食品があってもなかなか口にしない被災者が多くいます。理由は、お湯を沸かす道具がない、後々のため取っておきたい、備蓄食ばかりで食欲がわかない、食事時間などの生活リズムが崩れてしまったなど様々です。こういった状況では、単に「食品を渡す」だけでは、支援として十分ではありません。レトルト食品を湯煎し温めたり、お湯を注いですぐに食べられる状態で提供すると、かなり食が進むようになります。
あらかじめ調理と味付けがされているレトルトやパウチ食品、冷凍食品の温めなどは、食材から作る炊き出し調理と比べればずっと手軽です。水が使えずしっかりと洗浄ができない環境下でも、開封せず温めるだけであれば衛生面の不安も減ります。使用方法さえ知っておけば、持ち込んだ資機材での湯煎は大量調理経験者でなくても可能です。ピースボート災害支援センター(以下、PBV)では、調理場所などの炊き出し体制が整うまでは、効率的で衛生面でも安心な支援の選択肢として、湯煎調理を実践しています。
3.自炊のサポート

集落によっては、地域住民同士が食材を持ち寄って共同調理を行う自主避難の形もあります。ただ、スーパーが被災していたり、買い出しへ行く移動手段がなかったりと、継続的な食材の調達が困難なケースがあります。長期化すれば経済的な負担も増えるので、こういった集落には調理した食事ではなく、「食材そのもの」を届ける方法も選択肢のひとつです。卓上コンロやカセットガスといった調理器具の提供も役立つかもしれません。
発災前に調理をしていた人は、そのための環境と材料さえあれば自分で調理ができます。むしろ、自分の役割があることが活力につながるかもしれません。調理から配膳まですべて支援者がやってしまうのではなく、あえて被災者の「できる」「やりたい」を部分的にサポートする方法も検討してみてください。
4.炊き出し(屋外調理)

その場で調理する温かく栄養のある食事は被災者にとても喜ばれます。一方で実施するには、資機材や食材の調達、衛生管理などに相応の準備が必要です。今後、被災地での炊き出し(屋外調理)を検討しているのであれば、まずは防災訓練や地域の行事などの機会を見つけて、設営から撤収までのシミュレーションをしておくことをお勧めします。
PBVの炊き出しでは、一度に300〜500食程度の食事の提供を想定しています。広場や駐車場などの一角を借りて、近隣の在宅避難者向けに炊き出しを実施することがありますが、避難所のように事前に正確な対象人数がわかりません。途中で不足しないように量や容器類を多めに準備しておくとともに、汁物や丼ものなど状況に応じて1人分の量を調整しやすいメニューを選んでいます。
5.キッチンカー

機動力のあるキッチンカーは、強力な災害支援ツールのひとつです。移動式の調理場であるとともに、発電機を備えたキッチンカーであれば停電中の被災地でも食材の冷蔵保管が可能になります。2023年にPBVが運用を始めたキッチンカー「フーバー」は、その後の能登半島地震や九州での水害時にも出動し活躍しました。
これまでもたくさんの企業や飲食チェーンが、丼もの、ラーメン、たこ焼きなどのキッチンカーで支援に駆けつけています。主食の提供以外にも、アイスクリームやクレープなどのスイーツも大変喜ばれています。
6.セントラルキッチン(屋内調理)とデリバリー

最も大量調理に向いているのは、電気、ガス、水道などのライフラインが使用可能で、資機材や道具が揃った屋内の調理場です。十分なスペースと人員が確保できれば、PBVも1日2,000食以上、また昼・夜などの複数回の調理を担った経験があります。これを「セントラルキッチン」方式と呼んでいます。
セントラルキッチンで調理した食事は、複数個所に配送(デリバリー)します。お弁当形式のほか、汁物などは配布場所に着いてから再加熱をして提供します。セントラルキッチン方式で調理する場合は、配達時間を考慮した衛生管理、保管方法に気を配る必要があります。配達まで意識した立地条件は、セントラルキッチン開設の重要な検討材料です。
7.お茶会やサロン

仮設住宅への入居は、個々のプライバシーが保たれる反面、引きこもりや孤立の恐れがあります。過去の教訓から仮設住宅には集会所や談話室が設置され、「お茶会」や「サロン」などの様々なコミュニティ形成の取り組みが企画されています。コーヒーやドリンク、スイーツなどの提供や差し入れがあれば、集まりはより賑やかで楽しいものになるでしょう。
過去の被災地の多くでは、災害前から課題だった人口流出が加速し、将来への不安を抱えていました。ライフラインの復旧だけが、食の支援終了の合図ではありません。形を変えても、被災者にとっては支援に来てくれること自体が「自分たちは忘れられていない」と実感できる何よりの支えになっているのかもしれません。
第2回目は、多様な食の支援の選択肢を見てきました。現地での活動を取り上げましたが、近所の物産展などで被災地のグルメを購入したり、ふるさと納税の返礼品で名産品を選んでみるなどの「買って応援」「食べて応援」は、被災地外でも参加できる広い意味での食の支援と言えるかもしれません。食で被災地・被災者を支援する取り組みが、もっと広がっていくことを願っています。
- 内閣府防災情報「3 炊き出しその他による 食品の給与 4 飲料水の供給」
- 特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)食と栄養 ワーキンググループ.被災者支援コーディネーション ガイドライン<食と栄養>.2022年3月
- 食べる支援プロジェクト(たべぷろ).災害時の食と栄養 支援の手引き【初版】.2021年5月
- 一般社団法人日本家政学会「炊き出し衛生マニュアル」,2014年3月
- みんなの炊き出し研究所「災害時の炊き出しに関わる課題・解決事例集~災害時の「食」にまつわる課題36事例~」,2022年6月
- 辛嶋友香里「輪島市での避難所運営・避難生活支援について~令和6年能登半島地震及び9月奥能登豪雨における活動~」.地域防災データ総覧,2026年